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●野澤丞さん
私が骨髄バンクを知ったのは六年くらい前、昔の彼女から教えてもらって初めて耳にしました。
初めは読めない漢字で堅そうな組織。良いイメージはありませんでした。
でもすこしづつラジオやテレビで紹介されるたびに、イメージが変ってくるのを覚えています。
いくら命を助けるとは言っても、自分を傷つける手術と聞いて悩みました。いろんな人に聞いて回りました。まず友達「俺はいいやー」「私もちょっとなー」と言う反応で、自分が変わり者に思えたことを覚えています。でも専門家なら、勧めてくれると思い相談しました。合コンで知り合った看護師。答えは意外なもので、「死ぬほどいたいよー」「やめておきな」私はその言葉にショックを受け、自分が間違っていると感じました。
それからは一年以上骨髄バンクの事を考えなくなりました。どうしてそんなに反対を受け、登録をしたのか今でも不思議です。
でも、何か引っかかったんですよ。変な正義感というか、変な自信。こんなに大変で辛いことは、誰もやってくれない、登録も増えない。このままでは、患者さんはみんな死んでしまう。誰もやらないなら自分しかいない。やってやろうじゃないか!はっきり言って意地になってました。反対された看護師に見返してやりたい。やればできること証明したかった。
そんな理由で登録したんです。
でも登録してからすぐに寂しくなりました。回りの誰も骨髄バンクを理解してくれないから。とにかく、自分の変な正義感を理解してくれる人がほしかった。だから、ボランティアに参加しました。ボランティアと言っても、患者さんの病気を考えると、きっと堅く暗いイメージだと思っていたボランティアも行ってみるとびっくり。明るくてフレンドリーに歓迎されました。そのとき戸惑いもありましたが、うれしかった。私の考えを理解してくれたからです。私の考えは間違いではないとようやくほっとしました。そしてなにより、同じような考えで同じ空気の仲間に出会えたことはおおきな収穫でした。
そんな仲間というか大先輩たちと、ボランティアをして五年が経ち、ようやくドナー候補に選ばれました。五年という長い間に、ドナーになる覚悟はできており、あまり怖さはなかったです。ただ親への説得はまだでしたし、なんの理解の示してくれませんでした。かなり困りました。だって喜んでやれという親は変ですもん。やっぱり心配ですよ。反対するのが親心なんですよね。だから説得するの諦めてました。説得しなくても熱い思いが伝われば大丈夫だと勝手に思い込んでました。
最終同意の時に、立会人になってくれた斉藤江美子さんごめんなさい。ほとんどドナーのこと話してませんでした。やる気だけ先走って大事なことできませんでした。今だから話せますけど・・・
そして、ドナー提供に至ったわけですけど、親の許しがもらえればこっちのもので、親の心配をよそに浮かれていました。まるで遠足を待つ子供のように・・・
結局最後まで、親は病院の見舞いに来てはくれませんでしたが、親を責めたりはしてません。許しをもらっただけでありがたい。感謝してます。
そしてついにドナー提供の前日入院。初めての入院で、うれしさ半分怖さ半分。本やテレビを見て過ごし、禁煙との密かな戦い。でもエンジョイしました。私としては熟睡したつもりです。
朝早くからの手術室、ストレッチャーに乗せられた瞬間、想像以上の緊張。やっと、ことの重大さにきずいた時、もう記憶にないです。
どんなドナー提供手術だったんでしょう?患者さんが男性らしく、多めに採取したらしい。
それから数時間後、目が覚め痛みとの戦い。腰を横にすれば楽なのですが、横にするなと吉田孝行さんに怒られました。
でもその痛みも夕方になると、麻酔の効き目とともになくなり、とっても安心しました。珍しいケースらしいですが、その日の夕食は全部平らげました。ついでに差し入れのプリンも。
すごい回復力。それもこれも提供直後から介護してくださった皆様のおかげです。
そして、遠くから何度も来てくれたなめちゃんありがとう。
あとで聞いた話ですが、提供直後から、高いびきで長い間寝てたそうです。以外に熟睡していなかったみたいです。ご迷惑おかけしました。
もうひとつ、斉藤江美子さんが私の奥さんに間違えられたらしい?それが本当ならば、私は何歳に見えるんだー!残念!
ドナー提供体験はこんな感じで無事終わりました。
私がボランティアを始めてから、よく聞かれる言葉「どうしてそんなことやってんの?」
私はどう答えていいか悩み「なんとなく」と答えてました。だってボランティアをしている理由は二つあるから。ひとつは苦しんでる患者さんのため。もうひとつは自分のため。
でもさー「自分のため」と言ったら、偽善者になるでしょ。誤解されるのが怖い。だから悩むんですよね。言いたくても言い出せず「なんとなく」と答えてました。
でも、ドナー提供してから考えが変ってきたんですよね。自信をもって、ドナーになった理由は「患者さんのためであり自分のためです」と言えるようになりました。今になって思えることは、きっかけや理由なんていらない。ただやりたい、やり遂げたいという気持ちが大事なのだと解りました。
ドナー提供からだいぶ日も経ち、傷はほとんどありません。腰の違和感もありません。もう昔の事のようです。登録する時の悩みや最終同意の時の悩みなんて、馬鹿らしいほどです。
それだけ、あっという間に終わり、少しの痛みに耐えただけです。私のしたことは、すごいことと言われますが、当の本人はケロッとしてるんですから。やれば、大した事はないんです。この気持ち解ってほしいなー。
これから登録を考えている人は、きっと悩んでいるでしょう?怖いでしょう?でも考え直してみてください。もちろん患者さんのためにやるわけですが、自分のためにもなります。自信が付きます。前向きになれます。いいこといっぱいです。一石二鳥ですよ。人の命を救って、なおかつ自分もプラスになる。こんないい話ないです。だまされたと思って、一度チャレンジしてみてください。答えはやってみてからのお楽しみ・・・
(梁川町在住)
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