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●鈴木 ゆみ子さん

 骨髄バンクに登録してから6年以上が経ち、30歳の誕生日目前に「3次検査の依頼」が骨髄バンクから届きました。「いつかはドナーになりたい」と思っていた私にとって待ちわびていた通知でした。

さっそく、両親に同意を求めました。両親は骨髄バンクから送られてきた「骨髄提供者になられる方へのご説明書」を二人で読み夜遅くまで話し合ったそうです。

翌日、私には「あなたの意志を尊重する」という短い言葉でその話し合いの結果を報告してくれました。「でも、軽い気持ちで同意するんじゃないことを覚えておいてね。」と母が付け加えました。

 その後、ドナーに選定され最終同意には母が同席をしてくれました。私は全身麻酔などに関しても不思議なくらい不安を感じていませんでした。麻酔や採取のリスク・それに伴う事故などマイナス面も含めて話されたことでかえって安心することが出来ました。不安はなくとも、最終同意書に署名をしたときはやはり緊張しました。

最後に母が「相手の方の命もとても大切ですが、私にとってもこの子はかけがえのない子ですから、どうぞよろしくお願いします。」といって頭を下げました。突然、そんなことを言ったので、驚きましたが私の意志を尊重し同意してくれた上で言ってくれた言葉でしたのでとてもありがたいと思いました。と、同時にまだ採取病院は決まっていませんでしたが同席した調整医師が「わかりました」と言って下さったことも嬉しかったです。

私には二人の兄と一人の姉がいます。3人にはメールでドナーになる事を報告したところ、返事をくれました。

”長兄から” 骨髄提供って、献血みたいなものかと思っていたけど、この間、かあちゃんに聞いたら入院もして全身麻酔もして大変なものだと聞いてびっくりしました。 と同時にそれを喜んでやるゆみ子が立派だと思いました。1週間も仕事を休んでやるなんて大変だね。でもそのおかげで大きく人生が明るく開ける人がいるんだから、やりがいのあることですね。気をつけて無事に退院できることをお祈りします。

”次兄から” おめでとう。希望が叶って良かったね。誰かの役に立てるように身体に気をつけて精進してください。

”姉から” 骨髄の件、ドナー合格おめでとうございます。本当に、よかったと思います。

それに、そうやって見えない誰かのために、何かをする、思いやりというのが、究極の愛情というものだと思う。それが、今一番人間の生きる上で必要なことのような気がします。大袈裟なようですが、本気で思います。

そして、私はゆみこのことをとても誇りに思います。

それに、こうやって、家族や、友人に知らせることもまた、ひとつの大きな意義があると思います。

姉とは3次検査の通知が来たあと、電話で同意について話し合いました。姉は、反対はしませんでしたが「同意って、なに?だって、ゆみ子は私が反対したってやるでしょ。」と言われました。姉の言うとおり、私の決意は固いものでした。二人で話すうちに私は姉に「私は反対されたらなにが何でも説得してドナーになるつもりだけれど、場合によっては家族の反対により気持ちが変わる人だっているかもしれない。どちらにしても、家族に同意を得る段階でよく話し合うことが大切で、その話し合いの中から生まれた結論であれば後になって翻ることもないよね。」と言うと、姉も納得してくれました。 

 また、姉の「それに、こうやって、家族や、友人に知らせることもまた、ひとつの大きな意義があると思います。」という言葉が、骨髄提供を終えた後も「ドナーになった体験」を多くの人と語るきっかけにもなりました。

 

姉のメールを読んだ父から

わたしも、人の命って“ほんとに”“つくづく”尊いと、
この年になって、ますます そう思ってます。
その命が救われるのに役に立てるなんて ゆみ子は果報者だ。
ゆみ子も大事な命。ただ頑張れと思うのみ。
無事に役を果たせる事を心から祈っています。

子供の頃は喧嘩ばかり、この頃は一緒に生活をしていなかったのであまり言葉を交わす事のなかった兄弟からの、いつになく真面目な優しいの言葉は私の心に響くものでした。

最終同意をしてからは、それまで漠然と生きていた自分が、初めて生き方や命について考えるようになりました。また、両親や友人をはじめ周囲にいる人から、改めて“人の優しさ”を感じながら過ごしました。

私の骨髄を受け取ってくれた方は私と同じ「30代の女性」ということでした。入院する前の日、不意に「どうして私は骨髄を提供する側なのだろう」と思い、そのことを考えながら入院の準備をしていました。

採取のために入院する当日、両親に送ったメール

 今回はわがままを許してくださり感謝しています。
私の「身体が丈夫」という特徴を活かした方法で社会貢献ができることを嬉しく思います。
 ドナーに決まって以来、本を読んだり病院の外来で待っていたりしたとき「自分の健康は自分で守る」というけれど、それが叶わない人がたくさんいるという事を知りました。
 今回、私はドナーという立場で骨髄移植に参加しもう一人の女性は患者として参加する。
この違いは、何なのだろう?と思います。どこが分かれ目だったのかな?逆の可能性だってあったのでは。
 そこで、思ったことはこの様な身体に産んでくれたこと、育ててくれたことを感謝いたします。
それから、この様な気持ちにさせてくれたみんなに感謝しています。
行ってきます。

採取当日、見舞いに来た母が病室に残してくれた手紙

昨日はメールをくれてビックリしました。あげる側のゆみ子の母であることを「良かった」と思うと、同時に同じ30代の女性が生死の不安にさらされているのを思うとき複雑な思いです。病気におかされてしまって辛いでしょうね。でも、あなたの努力と勇気で元気になれるかも知れない。こんなに、素晴らしい社会貢献はないですね。

母の言うとおり、相手の方もそのご家族も健康を願い生活してきたことを考えると、私が両親に伝えた言葉だけでは私が提供する側になったことへの答えにはならないと思います。

 骨髄提供の為に出会った担当医師とは多くの言葉を交わさなかったにもかかわらず、少ない言葉や態度の中から私は先生を心から信頼する事が出来ました。

 採取後の健康診断を終え、全て無事に終了したとき手紙を書き感謝の気持ちを伝えました。

担当の先生からのお返事の一部を紹介します。

担当医師からのお返事

病気であること、病気の家族を持っていることが、どれほど大変なことかをあらためて思いました。患者さんは一人一人に、その人の歩んできた人生があり、家族がおります。そして一人一人が皆かけがいのない人たちであることを思い、この仕事に就いていることの重みを感じております。

先生は検査や採取で病院を訪れるたびに「ありがとうございました」とお礼を言ってくださいました。ご自分の患者さんを大切に思い、またその方の人生やご家族を思いながら仕事をされていることに、同じ医療に携わるものとして(歯科医師をしています)尊敬し、その言葉から多くのことを学びました。

〜骨髄を受け取ってくれた方へ〜

採取の為の入院当日の朝、相手の方に手紙を書き、病院に向かう途中でポストに投函しました。相手の方に最も伝えたかった言葉は「ありがとう」でした。いつかはドナーになりたいと言う夢が叶ったこと、この日までいろいろな思いを抱く事ができたその感謝の気持ちを伝えたかったのです。

 考えた末に私が選んだ言葉は「あなたとご縁があり、ドナーとなり社会貢献ができることに感謝しています。ありがとうございました。」というものでした。

社会貢献という言葉を書いたことは今でも後悔しています。相手の方への感謝の気持ちを伝えたかったからとはいえ、「社会貢献」という言葉を書いた私の手紙は自分の思いばかりが先行し「命がけで病と闘う人」に対してあまりに無神経な言葉であったと思っています。採取の為に入院した4日間、病気の方々の中で、病室で寝起きをしてみてその思いを強くしました。

骨髄採取(相手の方は移植)から一ヵ月後、相手の方からのお手紙が届きました。

骨髄を提供する私が「なぜあげる側なのだろう?」と思うより何倍も、相手の方はご自分が病気になったことや骨髄移植を受けることに対して「なぜ自分が」という思いは強いのではないかと思います。それでも、ご自分の病気と向き合いドナーがみつかったときの喜びを手紙に書いてくださいました。また、ご自分の病気のことよりも先に私の身体や痛みを気づかう言葉が綴られていました。

最後に「私の恩返しは元気になること、そして、あなたのように社会貢献が出来るようになることです。そうなれるように頑張ります。」と書かれていました。この言葉で自分の書いた手紙に対する後悔が少しだけ解きほぐされました。

4年前、骨髄提供の最終同意をしたとき、私は提供する日をゴールの様に思い生活をしていました。確かに、採取する病院に無事に辿り着いたときには、ある使命を達成したかの様に感じホッとしました。しかし4年経った今、提供した日は決してゴールではなかったと思っています。

今度は相手の方が書いてくださった「恩返し」という言葉を受けて、私自身この様な体験をさせてもらったことに対して恩返しをしたいと思っています。

その「恩返し」という言葉のおかげでこの4年間、提供で終わると思っていた骨髄バンクとのつながりを少しではありますが持ち続ける事が出来ました。感謝しています。ありがとうございました。

(神奈川県在住)

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